身長伸ばす方法~医学的根拠のある正しい情報です

思春期を迎えるまでに、いかに身長をのばしておくかが重要

身長は思春期になったら勝手に伸びるの?

子供の頃、背が低いのを気にしていると、成長期になれば伸びるから心配いらないと、よく親に言われたものです。
大人になって振り返ってみても、自分の身長が一番伸びたのは思春期の頃だったと、多くの人が口を揃えていいます。
確かに、思春期には急激に背が伸び、だいたい20~30cmは高くなるものです。
服をすぐに新調した、背の順で後ろのほうになったなどのエピソードから、背の伸びた時期が記憶に残っているものです。
では、背の低い人は思春期にあまり身長が伸びなかったということでしょうか。
そんなことはありません。
ほとんどの場合、背の低い人も思春期にはちゃんと伸びているのです。
ただ、自分の理想とする身長にまで達しなかったために、思春期にグンとのびたという実感が持てないのではないかと思います。
実は、成人してからの身長は、思春期からの伸びで決定するものではないのです。
むしろ、思春期を迎える前までに、どこまで身長を伸ばすことが出来るかが大きく影響しています。
思春期の身長の伸びには個人差があるものの、思春期には誰もがおしなべて急速に背が伸びています。
その後、思春期が終わると背の伸びは止まります。
そのために、身長は思春期の間で決まると思われがちですが、大切なのは思春期が始まる時期なのです。
そもそも思春期とは第二次性徴期といわれ、身長がグンと伸びるだけではなく、子供から大人の体へと大きく変化していく時期をいいます。
これを一般には、成長期という言い方をしています。
大人になるということは、女子では乳房がふくらんで初潮を迎え、男子では声変わりをしたりヒゲが生えてきたりします。
個人差はありますが、平均的に男子は11歳前後、女子は9歳前後に思春期が始まります。
したがって、大人になれば成長が止まるわけですから、思春期は子供と大人の狭間にあって、大きく成長すると同時に成長が止まるという、ちょっと矛盾した状態となります。
そのために精神的にも不安定になりやすく、イライラしたり親に反抗するなど難しい年頃といわれるのです。
思春期は当然、日本人に限らず欧米人にも訪れます。
日本人と欧米人の身長を比べると、明らかに欧米人のほうが大きいのですが、これには思春期の始まる時期が大きく関係しています。
実は、12歳くらいまでは、日本人も欧米人も身長にはたいして差がないのです。
ところが、日本人は欧米人よりも思春期を迎えるのが早いために、成長も早く止まってしまいます。
これに対して欧米人は、思春期を迎えるのが遅いので、身長の伸びる期間も長くなる分、背が高くなるというわけです。
そうはいっても欧米人の子供のほうが大人びて見えますし、海外に行くと日本人は成人でも子供に見られたりします。
これで日本人が早熟といわれても、納得できないかもしれません。
その理由は残念ながらわかっていませんが、日本人は精神面で早熟だとか、小柄でベビーフェイスの人が多いので子供っぽく見えるとか、肌がきれいなので若く見えるのではないかと分析する研究家もいるようです。
いずれにせよ、思春期を迎えるまでに、いかに身長をのばしておくかが重要なポイントとなり、思春期はいわば身長の伸びのラストスパートの時期にあたります。
その後、思春期が終わると骨が固まり、大人の体が完成するからです。

親の身長から子供の身長が分かる計算式

思春期を迎えるまでに、いかに身長をのばしておくかが重要といっても、両親が小さければ子供も小さいに決まっていると、遺伝を理由に諦めているケースが多く見受けられます。
確かに、身長などの身体的特徴は、親からの遺伝が大きく影響しますが、背が低い要因は決してそれだけではありません。
実際に、両親は背が高いのに子供は低いケースがあれば、両親は低いのに子供は高いケース、あるいは兄弟でも身長に差があるケースなどいくらでもあることです。
ですから、遺伝だから仕方がないと考えるのではなく、そういう体質であることを認識したうえで、いかにして子供の成長を促すような生活を送るかと、前向きに捉えていただきたいと思うのです。
それでも、やはり子供の身長が将来どれくらいになるのか、親としては知りたいところではないでしょうか。
両親の影響を受けている以上、ある程度は次のような計算式で求めることができます。
●男子の場合は、(父親の身長+母親の身長+13)÷2±9
●女子の場合は、(父親の身長+母親の身長?13)÷2±8
男子の±9、女子の±8の数字が、遺伝以外の要因とされています。
たとえば、父親の身長が170cm、母親の身長が150cmとしましょう。
これを男子で計算してみると、(170+150+13)÷2=166.5cmが両親の影響、つまり遺伝からくる身長となります。
ここに生活習慣などの環境が加わることで、-9cmで157.5cmになることがあれば、+9cmで175.5cmになる可能性もあるということです。
その差は、なんと18cmにもなるのです。
環境しだいでは、身長が男子の場合は9cm、女子の場合は8cmも高くなる可能性があるということです。
そう考えると、子供の身長には環境の影響が大きく左右することがわかるのではないでしょうか。
全国の20~50代の男女400人(各200人)を対象に、身長に関するアンケート調査を実施いたしました。
その内容は、どれくらいの人が身長について悩みや理想を抱いているかというものでした。
その結果、現在の身長に満足していると回答した人の割合は52.2パーセント、満足していないが47.8パーセントと、半数近い人が自分の身長に不満を抱いており、そのうちの88.5パーセントの人が身長が低いことを理由に挙げていました。
そして、あと5cm背が高ければと感じていたのです。
背の低いことを気にしている成人の希望が、あと5cm高くなりたいであるなら、環境によって8~9cmも高くなる可能性を秘めている子供時代に、それを実現させる取り組みを行うことは大いに意義のあることではないでしょうか。
子供の頃から将来の身長が決まっているかのように諦めているとしたら、それは間違いであることをまずは認識していただきたいと思います。

ヨーロッパ人はもっと背が低くなりたいと思っている人が多いそうです

オランダなどヨーロッパを旅行したとき、男性トイレがすごく高くて、用をたすのに苦労したという話を耳にします。
また、北欧の家具は素敵ですから購入する人も多いと思いますが、そのまま使用するにはテーブルや医師の高さが日本人には高すぎて、買ったのはいいけれど使いにくいとも聞いたことがあります。
日本で作られる椅子の座面の高さは40cm前後のものが多く、テーブルの高さも70cm前後が大半です。
これは、日本人の使い方や体形を考えて作られていますが、最近は、ゆったりとくつろげるようにと低めに作られているものも多くなっています。
そのため、海外から輸入したテーブルの高さは75cmくらいありますので、日本人の体形やライフスタイルには合わないことがあるのです。
日本の場合、事務所の受付やシティホテルのフロントカウンターの高さは100~110cmと決まっており、この高さは日本人男性の平均身長を基準にして決められています。
ですから、平均より背の低い男性や女性にはちょっと高く感じてしまいます。
これに対して、鉄道車両の吊り革は、鉄道会社や電車の型式によって違うようですが、背の低い人でも高い人でもつかまれるようにと、高さの違う吊り革が設置されるなどの配慮がされているようです。
ですから、公共の施設などを使ったとき、高さに不便を感じた場合は、平均より身長が低いということでしょう。
日本人が、さまざまな場面で身長の低いことを気にして、背を伸ばしたいと思っているのに対して、オランダ人はもっと背が低くなりたいと思っている人が多いそうです。
世界の中で身長の高い国は、オランダ、デンマーク、ノルウェーなどで、平均身長が男性で180cm以上、女性でも170cm以上といいますから、日本人から見ると羨ましく思うかもしれません。
ところが、国が変われば悩みも変わるもので、オランダのクリニックには、これ以上、大きくなりたくないので身長を止めてくださいと要望する人が多いというのです。
日本人とはまるで逆の悩みを抱えているわけです。
身長の高い人には高いなりの不便さがあり、彼らにとっては深刻な悩みなのかもしれません。
日本国内でも、年代によって身長の考え方は違ってきます。
1980年代後半~90年代前半といえば、日本はまさにバブル景気に沸いていました。
当時の女性たちは、高身長・高学歴・高収入を3高といって理想の男性の条件に挙げていました。
けれども、身長に関するアンケート調査では、女性が理想とする男性の身長を170cmと回答した女性が一番多かったのです。
昔に比べて男性の身長を気にしないという、とても堅実な考え方をする女性が増えていると思われます。

身長が伸びるメカニズム

骨端線のレントゲン写真<思春期前>
骨端線のレントゲン写真<思春期前>

引用元;額田 成(2016). 身長は9歳までの生活習慣で決まる 飛田健治

骨端線のレントゲン写真<骨端線閉鎖後>
骨端線のレントゲン写真<骨端線閉鎖後>

引用元;額田 成(2016). 身長は9歳までの生活習慣で決まる 飛田健治

では、身長は、果たしてどのように伸びるのでしょう。
身長が伸びるというのは、すなわち骨が伸びるということです。
いつまで伸びるかは、主に股関節や膝関節、つまり人体で最も大きな骨である大腿骨の端にある「骨端線(成長線)」がカギを握っています。
子供の骨の両端には骨端線といわれる軟骨部分があり、ここで細胞分裂が盛んにおこなわれて骨の組織をつくっています。
この部分はいずれ骨に変わっていく境目にあたる、いわば「骨の伸びしろ」のようなものです。
したがって、骨端線が残っていれば、まだ身長が伸びる可能性があるといえます。
これは、レントゲン撮影で簡単に確認することができます。
骨端線の成長には、「成長ホルモン」、「性ホルモン」、「甲状腺ホルモン」という3つのホルモンが大きくかかわっています。
ホルモンは体内でつくられる物質で、その多くが内分泌腺から分泌され、血液の流れに乗って全身を巡りますが、どの組織にも作用するわけではありません。
ホルモンの種類によって作用する組織が決まっており、その特定の器官にだけ働きかけて体の機能を一定に保いつ役目を果たしています。
成長ホルモンは、その名の通り身長を伸ばすためには最も重要なホルモンで、脳下垂体という場所から分泌されています。
成長ホルモンが分泌されて血液によって肝臓に運ばれると、「ソマトメジンC(IGF-I)」と呼ばれる成長因子がつくられて血液中に放出されます。
このソマトメジンCが骨に届いて働きかけることで、軟骨細胞が増殖して骨を長軸方向に伸ばしていきます。
それで背が伸びるわけです。
ソマトメジンCは万能細胞のようなもので、成長段階にあるときには骨の成長を促しますが、成長が止まった後では筋肉を太くしたり、血管や神経など体の組織をつくる働きをするようになります。
わかりやすい例では、高校野球の選手たちはかなりハードなトレーニングをしているにもかかわらず、がっしりとした体形に変わっています。
これがソマトメジンCの働きによるもので、思春期までは優先に骨のほうに送られるので身長は伸びますが、骨の成長が止まると筋肉など他の組織を発達させるほうに回されるので、今度は体格がよくなるのです。
では、骨の成長を止めるのは何かというと、それが性ホルモンです。
性ホルモンは大人になるように促すホルモンで、理由は解明されていませんが思春期になると活発に分泌されるようになります。
これには「男性ホルモン」と「女性ホルモン」があり、これらのホルモンの働きによって男子は声変わりやヒゲが生え、女子は胸が膨らみ初潮を迎えます。
性ホルモンは成長ホルモンの分泌を増加させたり、骨に直接働きかけたりして骨の成長を促進する働きをしています。
しかし、その一方では子供の骨を硬く成熟した大人の骨へと成長させ、身長の伸びを止める働きも担っています。
思春期に入って身長がグンと伸びた後、伸び率が急激に低下するのはそのためです。
つまり、身長のラストスパートをかけるのが、性ホルモンの働きということになります。
特に、女性ホルモンに骨端線を閉じさせる働きがあるために、男子よりも女子のほうが早く成長が止まってしまいます。
ですから、骨端線が残っていれば思春期でも身長は伸びますが、あくまでラストスパートであり、いわば大人になるサインであるために2~3年で骨端線は閉じ、成長も止まります。
それに対して、甲状腺ホルモンがどのような役目を果たしているのかというと、骨の成長を促進したり、細胞の新陳代謝を活発にしたり、成長ホルモンの分泌を促す働きをしています。
これら3つのホルモンの働きによって身長が伸びる仕組みになっていますので、ホルモンの分泌に異常が生じると背が伸びにくくなる「低身長」(成長障害)といわれる状態に陥ってしまいます。
たとえば、甲状腺ホルモンはのどにある甲状腺という場所から分泌されますが、何らかの原因で甲状腺の機能が低下すると甲状腺ホルモンが不足します。
脳下垂体から分泌される成長ホルモンが不足すれば、身長だけではなく体のあらゆる成長が遅れてしまいます。
また、肝臓の機能が低下すれば、ソマトメジンCがつくられなくなって骨の成長自体が阻害されます。
このように、内臓の病気であったり、染色体に異常があるといった遺伝子の問題など、さまざまな要因で低身長を引き起こします。
もしも子供の成長が気になるときには、ホルモンの分泌に異常がないかを検査してみるとよいでしょう。
病気が原因で身長が伸びない場合は、早い時期に気づいて治療を受けることで身長を伸ばすことは可能となります。

低身長が疑われるときは?

子供の成長を妨げる原因が病気にある場合は、もちろん原因となっている病気の治療を受けるのは言うまでもありません。
それと同時に、不足している成長ホルモンを体外から注射によって補充する治療なども行なわれます。
それには、まず検査をして詳しく調べることが必要です。
最初に、問診や身長・体重測定、レントゲン検査、血液検査で体のバランスなど現状を確認します。
これによってホルモンの分泌に問題があると疑われるときには、成長ホルモンの分泌能力を調べる成長ホルモン分泌刺激試験を行ないます。
この試験は、成長ホルモンの分泌を促進させる作用のある5種類の試薬を用います。
飲み薬、点滴、注射のいずれかで子供の体内に投与した後、30分ごとに2~3回採血をして、その結果で判断します。
治療の対象となるのは、成長ホルモンがまったく分泌されていない、あるいは分泌されていても基準値以下であった場合です。
そのときには、成長ホルモンは寝ている間に一番分泌されることから、寝る前に成長ホルモンを自己注射して補うようになります。
そのため、事前に注射の仕方を、本人や親に対して指導が行われます。
この治療を続けていると、最初の3か月くらいで食欲が増進したり、よく眠れるようになったりして、運動しても疲れにくくなるといった効果が現われます。
最初の1年間で急激に身長が伸び、5~10歳くらいでは平均して通常の1.5倍の約5cmは伸びてきます。
2年目以降は穏やかな伸びにはなりますが、3年目以降では他の子供に追いつき同等の身長になることがほとんどです。
したがって、ある程度の期間は治療を継続する必要はありますが、これによって背の低い子供の身長を伸ばすことができるのです。
ところが、5年以上治療を続けても平均身長が男子で160.3cm、女子で147.8cmです。
治療したにもかかわらず、-2SD以下が男子で38.1パーセント、女子で46.2パーセントとなっているのが現状です。
なぜ、十分な成果をえられないのかというと、この治療の認知度が低いことが大きなネックになっています。
早い時期に治療を開始すれば、身長の低い子供を巻き返すことは十分に可能ですが、認知度が低いために年齢が進んでから受診するケースが非常に多いのです。
前述したように、背の伸びしろである骨端線がほとんど残っていない状態では、治療にも限界があります。
治療に入る時期が遅ければ、思春期の始まる時期が決まっている以上、それだけ成長を促す期間も短くなります。
その結果、身長が十分に伸びきらないまま思春期を迎えることとなります。
これが、治療効果を発揮できない大きな要因になっています。
この治療の対象者は保険適応となりますので、同じ年、同じ月に生まれた子供と比較して小さいと感じたら、一度検査してみるとよいでしょう。
ここでもう一つ、低身長の要因として触れておきたいことに、早熟児・低出生体重児で生まれたケースがあります。
現在は、医療技術も器具も発達してきましたので、昔ならとうてい助からないと思われた赤ちゃんでも命を救うことができるようになりました。
たとえ22週で生まれても、生存率が高くなっています。
小さく生まれてきた子供は、ほかの子供に比べてスタートの時点ですでに差が生じていますが、通常は2年くらいの間で追いついていきます(これをキャッチアップという)。
ところが、そこからの成長が遅れて差が開いてくるケースがあり、これを「SGA低身長症」といって、やはり治療の対象になります。

SGA低身長症の治療モデル
GA低身長症の治療モデル

引用元;サイト名:【成長ホルモン関連疾患解説】成長ホルモン分泌不全性低身長症/成長ホルモン治療の開始はいつから?

治療開始1年目:急速に伸びる(1.5~2倍)
治療開始2年目:ゆるやかな伸び
治療開始3年以降:他の子供と同等
一般には体重が2500グラム以下で生まれた赤ちゃんを「低体重児」と呼んでいますが、この中でも母親のお腹の中にいる期間(在胎週数)に応じた本来の大きさよりも小さく生まれた赤ちゃんを、近年はSGA(Small-for-Gestational Age)と呼ぶようになりました。
分かりやすい例でいいますと、個々に2000グラムで生まれてきた赤ちゃんが2人いたとしましょう。
1人は予定よりも1カ月早く生まれ(在胎36週)、もう1人は予定日通り(在胎40週)だったとします。
この場合、予定より1カ月早く生まれた赤ちゃんは、もしも予定日までお母さんのお腹の中にいたなら、もっと成長して2500グラム以上になって生まれた可能性があるわけです。
ですから、この場合はSGAとはいいません。
これに対して、予定日までお腹の中にいたにもかかわらず2000グラムで生まれた場合は、同じように40週間お腹にいたほかの赤ちゃんに比べて、明らかに小さいことになります。
したがって、この場合はSGAとなります。
SGAであっても、多くは2歳までにキャッチアップしますが、なかにはキャッチアップせずに低身長のまま成人することがあります。
そこで、2歳を過ぎてもキャッチアップしないときには「SGA低身長症」の可能性がありますので、検査をして診断が下されると成長ホルモンの分泌を促す治療を積極的に受けることができます。
ですから、早熟児・低体重児で生まれたとしても、その後の対応しだいでは身長を伸ばせる可能性が高いのです。
ただし、こうした情報を両親が知っていて、早い時期に手立てを講じた場合の話です。

身長が伸びるラストスパートの目安は?

一般には思春期というと、男子なら声変わり、女子なら乳房のふくらみや初潮が一つの目安とされています。
しかし、思春期の始まる前までが勝負だとすると、体に変化が表れるのには個人差がありますから、親としては、それ以前に気づくことができないものかと気になるところかと思います。
そこで、思春期(第二次性徴期)の評価として広く用いられている「タナーの性成熟度分類」があるので紹介しましょう。
これは、陰毛、乳房、男性生殖器の発育を5段階に分けて評価されています。
<陰毛>
1度:陰毛なし。
2度:長くやや黒さを増した産毛のようなまっすぐな、またはややカールした陰毛が認められる。
3度:陰毛は黒さを増し、硬くカールしてまばらに恥骨結合部に広がる。
4度:陰毛は硬くカールし、量・濃さを増し、成人と同じようになるが、大腿中央部までは広がっていない。
5度:成人と同じように広がり、逆三角形になる。
<乳房>
1度:思春期前。乳頭のみ突出している。
2度:蕾の時期。乳房、乳頭がやや膨らみ、乳頭輪径が拡大。
3度:乳房、乳頭輪はさらに膨らみを増すが、両者は同一平面上にある。
4度:乳房、乳頭輪が乳房の上に第二の隆起を作る。
5度:成人型、乳頭のみ突出して乳房、乳頭輪は同一平面となる。
<男性外性器>
1度:幼児型。
2度:陰嚢・睾丸は大きさを増し、陰嚢はきめ細かくなり、赤みを帯びる。
3度:陰茎は長くなり、やや太くなる。陰嚢、睾丸はさらに大きさを増す。
4度:陰茎は長く、太くなり、鬼頭が発育する。陰嚢、睾丸はさらに大きさを増し、陰嚢は黒ずんでくる。
5度:成人型となり、大きさを増すことはない。
この分類のうち、2度で思春期が始まるとされています。
男子では3~4度に身長のラストスパートが、女子では2~3度に身長のラストスパートがかかります。
それに当てはめると、男子の声変わりの時期は4度、女性の初潮は3~4度となり、親が子供の変化に気づいたときには、すでにラストスパートの最終段階を迎えていることになります。
つまり、思春期の始まったサインだと思っていたのが、実はピークを過ぎた後だったということになるのです。
ここを多くの人が勘違いしているために、成長期にいるのだから「今なら身長を伸ばせるに違いない」と思って受診します。
しかし、それでは手遅れのケースが殆どなのです。
また、「うちの子は親に似て『おくて』だから成長が遅いのかな」と呑気に構えていることがあります。
確かに、おくての子供が多いのも事実で、一般的にいわれている『おくて』は心身ともに健康で、単に思春期を迎える時期が遅いだけのケースです。
この場合は、ほかの子供よりも1~2年遅れて身長がグンと伸びてきます。
しかし、それにも程度があり、だいぶ遅れて思春期を迎えると、身長があまり伸びないまま止まってしまうこともあります。
なかには病気が原因で遅れていることがあり、その場合は気づいたときには低身長だったというケースがよく見られます。
目安としては、ほかの子供と比べて、1~2年遅い程度であれば問題はありません。
それ以上遅れているようなときには、専門医に相談したほうがよいでしょう。

身長は9歳までに、ほぼ決定している

思春期での身長の伸びは、あくまでラストスパートです。
最も重要なのは、成長ホルモンが十分に分泌され、なおかつ性ホルモンが分泌されるようになる前までの時期となります。
この期間に、どれくらい背が伸びたかが、思春期に入ってからの伸び方に大きく影響してくるからです。
子供の身長が最も伸びるのは、生まれてからの1年間です。
皆さんもご存知のように、生後間もない赤ちゃんの身長は50cmほどですが、1歳になる頃には75cmと、1年間でなんと1.5倍も伸びているのです。
その後、4歳頃になると100cmになるのが標準的な成長パターンで、生まれたときと比べると実に2倍の身長になっています。
ここまでの時期では、まだ成長ホルモンが分泌されていませんので、子供の栄養状態が非常に影響してきます。
ミルクをよく飲んだり、離乳食や一般食をしっかり食べていたりする子供は、やはり発育がよく、そうでない子供との間で身長にも差が生じてきます。
ですから、第1のポイントは、4歳くらいまでといえます。
ここまで大きく育った子供は、順調に成長していけば将来身長も高くなります。
よく尋ねられることに、母乳とミルクのどちらで育てた子供が、その後に身長が伸びているかという質問です。
これが難しいところで、両者にはそれぞれメリットがありますから、どちらがよいとは一概にはいえません。
生まれてから1年くらいの赤ちゃんには免疫がないため、母乳を飲むことで母親が獲得した免疫物質を受け取っています。
これによって赤ちゃんは免疫力を高め、病気になるのを防いでいるという大きなメリットがあります。
よくテレビ番組で、動物の赤ちゃんが生まれるシーンが放送されます。
そのとき、生まれたての赤ちゃんはすぐに母親のもとへ行き、おっぱいを飲んでいます。
この初乳を飲むことで、免疫をもらっているというわけです。
動物の場合は、初乳を飲まないと無事に成長することが難しいといわれています。
これに対して粉ミルクは、どれだけ飲んだかを正確に把握でき、また赤ちゃんの成長に必要な栄養もバランスよく含まれています。
その反面、母親からは大事な免疫を受け継ぐことができません。
ですから、両方をうまく利用すればよいと思います。
たとえば、母乳だけで赤ちゃんを育てようと頑張りすぎないで、体調が悪いときには粉ミルクを利用することも、場合によっては必要です。
さて、第1のポイントを過ぎ、成長ホルモンが出始めるのは4歳前後からです。
ここからは身長の伸び率は誰もがやや低下し、年間5~7cm前後と穏やかな成長になります。
この時期に、日常生活をどのように過ごしているかで成長の仕方も違ってきます。
まず、4歳頃から幼稚園や保育園に通うようになりますので、同じ年齢の子供と比べて「うちの子は小さい」と、親が気づくようになります。
子供に好き嫌いも出始め、何でも食べる子と偏食の子、あるいは小食だったり食事自体に興味がない子では、ますます成長に大きく差が出てきます。
その差は小学校に入っても縮まることはなく、そのまま思春期を迎えることになります。
思春期では、男子は25~35cmほど、女子は25cmほどが誰でもラストスパートをかけて伸びてきます。
したがって、思春期が始まる9歳くらいが第2のポイントといえます。
思春期での身長の伸び率が決まっている以上、9歳までにどれだけ背を伸ばしたかで、その後の身長が決まってしまいます。
そうはいっても、自分の子供が果たして平均的な成長を遂げているのか、親にはわかりません。
ほかの子供と比較して、小さいから成長が遅れていると判断するしかありません。
そこで、子供の成長を見る目安となるのが「成長曲線」です。

横断的標準成長曲線-男児用
横断的標準成長曲線-男児用

引用元;サイト名:成長曲線とは(図1)

横断的標準成長曲線-女児用
横断的標準成長曲線-女児用

引用元;サイト名:成長曲線とは(図1)

成長曲線は正式には「横断的標準成長曲線」といって、年度を定めた上で、色々な年齢の子供を男女別に多数集めて身長を測定し、年齢別の平均値を曲線でつないだものです。
これによって、子供の身長が平均的なのか、高いのか低いのか、成長パターンがある程度はわかるというわけです。
平均値に対して、+2SD、+1SD、?1SD、?2SDの成長曲線も描かれています。
SDとは標準偏差のことで、平均値からのバラツキの程度、つまり分布の幅を数値で表したものです。
プラスの場合は、平均よりも身長が高めの曲線、マイナスの場合は低めの曲線を描きます。
通常、+2SDと?2SDの間に全体の約95パーセントの子供の身長が入ることから、?2SD以下の場合は先に説明した「低身長」と判断され治療の対象となります。
たとえば、9歳で130cmあれば平均的身長となり、将来は170cm程度になると予測がつきます。
それとは逆に、125cmであると?1SDとなり、将来は165cm程度になる可能性が高くなります。
このように、身長によって成長パターンが決まってきます。
9歳までに平均以上の成長曲線の範囲内に収まっていれば、将来も平均身長以上に伸びる確率が高くなりますが、平均身長より低いときにはそれよりも高くなることは望めそうにありません。
では、平均値より低い場合、親として子供に何をしてあげられるのでしょうか。

巷には、身長を伸ばす方法や商品が溢れている

子供の身長が平均より低くて将来が心配なとき、「身長を伸ばす方法がある」と聞けば親としては試してみたくなるものです。
それで効果がないとしても、「あのとき試していれば」と後になって悔いを残すよりは、試して後悔したほうがましと考える人もいるようです。
昔から身長を伸ばすための方法は、いろいろ取り上げられてきました。
特に、インターネット社会である現代は、自宅にいながら世界中の情報を簡単に手に入れることができます。
試しに、「身長を伸ばすには」というキーワードで検索してみると、51万件以上の情報がすぐに出てきました。
なかには笑ってしまう突飛なものから、説得力があって私でも思わず信じてしまうものまであります。
代表的なところでは、牛乳をいっぱい飲むとか、縄跳びをするというもの。
最近では、成長ホルモンの分泌を促進するサプリメントが登場して話題にもなっています。
そこで、多くの人が信じている方法を、ここできちんと検証していきたいと思います。

牛乳をいっぱい飲む?

子供の頃、牛乳を飲むと身長が伸びるといわれ、いっぱい牛乳を飲んだ経験はありませんか?
自分も信じて飲んでいたように、多くの親が子供の身長を伸ばすために牛乳を飲ませています。
身長を伸ばすには、骨を成長させること。
そのため、骨といえばカルシウム、カルシウムは牛乳に多く含まれている、だから牛乳がよいという図式がすぐに浮かんで納得し、誰も疑うことはありません。
確かに、牛乳はカルシウムが豊富ですから、骨にとって重要な栄養源であることに間違いはありません。
しかし、カルシウムは骨を硬く丈夫にする働きはありますが、骨を伸ばす働きはしていないのです。
したがって、牛乳を飲んでも直接的には身長を伸ばすことにならないのです。
さらにいえば、身長を伸ばしたいがゆえに1日1リットルも子供に飲ませるなど、度を越した行為が多く見受けられます。
これでは牛乳だけでお腹がいっぱいになり、肝心の食事が摂れなくなって栄養のバランスが悪くなりますので注意していただきたいと思います。

縄跳び等ジャンプの多い運動をする?

ジャンプは骨端線を刺激して成長ホルモンの分泌を促進するから背が伸びると、多くの人が信じているようです。
実際に、バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプをするようなスポーツ選手は身長の高い人が多いですから、背が伸びるイメージが定着しています。
しかし、ジャンプをすると背が伸びるのではなく、身長が高いと有利なスポーツなので背の高い人が集まっているわけです。
背の高い人は、それだけで優遇されるのに対して、背の低い人はどうしても活躍する機会が少なくなります。
そのために、やめてしまうケースが多く、結果として背の高い人が多く残っているといえるでしょう。
これとは逆に、体操選手に小柄な人が多いのは、そのほうが有利だからです。
同じ筋力で体重も軽ければ、それだけ高く跳べます。
また、体を支えてバランスもとりやすくなるため、平衡感覚が求められるようなスポーツでは小柄な選手が有利なので、最終的には残る傾向があります。
ですから、この運動をすると背が伸びるとか、伸びないということではないのです。
そもそも、骨端線を刺激したところで、成長ホルモンの分泌量は増えたりしません。
先に説明したように、骨を伸ばすには成長ホルモンが肝臓に届いてソマトメジンCがつくられることが大切なのです。

剣道は身長を縮める?

重い防具をつけて行なう剣道や、タックルの多いアメリカンフットボールなどは身長を縮めたり、伸びようとする働きを妨げてしまうのでよくないと信じている人がいるようです。
実際に、私もよく尋ねられるのですが、これも大きな誤解です。
剣道やアメフトの選手に身長の高い人が多いことは、皆さんも試合などを見ていてわかるのではないでしょうか。
身長は、寝ている間に最もよく伸びますので、昼間の運動種目は関係ないのです。
例えば、寝ている間もずっと頭をおさえつけているような状態を長く続けていた場合は、身長が伸びなくなる可能性も考えられます。
しかし、このような特殊な環境は、常識的にはあり得ません。
ですから、剣道を続けていても身長はちゃんと伸びます。

ぶら下がると身長は伸びる?

ひと昔前には、ぶら下がるだけで健康になれるという健康器具が流行りました。
それは、ぶら下がることで自分の体重によって背骨の骨と骨の間にある軟骨組織が伸ばされ、胴も伸びるので胃腸の調子がよくなるという触れ込みでした。
背すじが伸びて気持ちがよいとか、背が伸びたという噂が広まり、一時は子供達が鉄棒にぶら下がるなどブームにもなったことがありました。
確かに、猫背の人がぶら下がり運動をすることで姿勢がよくなり、身長が高くみえることはあるでしょう。
これは、単に猫背が改善されて本来の身長に戻っただけのことなのです。
また、軟骨組織の一つ一つは伸びたり縮んだりしますから、定期的にぶら下がっていると軟骨組織が伸びている時間が長くなる分、身長が伸びたように感じることがあります。
しかし、実際には身長が伸びたわけではないのです。
なかには、逆さまにぶら下がると脳に血液がたくさん行くようになるので、脳を刺激して成長ホルモンの分泌が高まるという方法まであります。
言うまでもなく、これにも効果があるとする医学的な根拠はありません。

成長ホルモンの分泌を促進するサプリメントを摂取する?

代表的なサプリメントには、「アルギニン」があります。
確かに、アルギニンは、成長ホルモンが正しく分泌されているかどうかを調べるために用いられる「成長ホルモン分泌刺激試験」の試薬としても使用されています。
しかし、分泌刺激試験に用いられるアルギニンの量は、体重1キロあたり0.5グラムです。
例えば、体重30キロの子供では15グラムを注射します。
これに対して、販売されているサプリメントに含まれるアルギニンの量は、1カプセル当たり5ミリグラムほどですから、量的にも全然足りません。
しかも、サプリメントのように口から摂取した場合は体内で代謝されるため、血液中はわずかな量しか残らないのです。
このようなことから、サプリメントでは成長ホルモンの分泌を促すには至りませんし、信頼できる学術雑誌等にも報告された記憶は残っていません。
つまり、科学的にも立証されてはいないのです。
また、成長ホルモンそのものが含まれているサプリメントも登場しているようです。
しかし、成長ホルモンはタンパク質ですから、口から入ると肉や魚と同じように唾液や胃液で分解され、栄養としてアミノ酸になるだけのことです。
ですから、成長ホルモンを体内に投与する場合は、必ず注射なのです。
もしも、口から摂取することが可能なら、糖尿病の治療薬であるインスリンの錠剤があってもいいはずです。
なぜなら、成長ホルモンとインスリンは分子構造が一緒だからです。
糖尿病の患者さんにとって、インスリンは生命にかかわる薬です。
そのため、決められた量のインスリンを毎日注射しなければなりません。
そのインスリンの錠剤が存在しない以上、成長ホルモンのサプリメントが存在することはあり得ません。
なかには、成長ホルモンを鼻や口に噴射するスプレーも出回っていますが、これも効果は全く期待できません。
これらのサプリメント等商品に関しては、小児内分泌学会でも効果がないという公式見解を発表しています。
このように、ほとんどの方法が医学的な根拠のないものでした。
こうした情報に惑わされるのは、正しい知識を持っていないからではないでしょうか。
皆さんには、何が本当で何が間違いなのかを正しく判断できるようになっていただきたいと思います。

成長ホルモンの分泌を促すには睡眠・栄養・運動が大事

では、医学的な根拠に基づいた、身長を伸ばすための正しい方法とは何でしょう。
それにはまず、「睡眠」が重要となります。
なぜなら、成長ホルモンは昼間よりも夜間、しかも寝ている間に多く分泌されるからです。
「寝る子は育つ」といいますが、これは医学的にも証明されている事実なのです。
また、起きているときには下半身の骨に体重がかかっていますが、横になって寝ることで縦方向の重力から解放され、骨はもちろん、体を休めることにもなります。
成長ホルモンは、免疫力を高めたり、細胞の修復や再生といった体のメンテナンスをする働きも担っていますので、十分な睡眠をとることは丈夫な体をつくるうえでも大切なことなのです。
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2つがあります。
レム睡眠は、目玉がキョロキョロと動き、脳は起きていますが体は寝ている状態の浅い睡眠です。
ノンレム睡眠は、目玉も動きませんし、脳も身体も寝ている状態の深い睡眠です。
成長ホルモンは、深い睡眠のときに分泌されるため、質の良い睡眠をとる必要があります。
さらに、成長ホルモンは寝ている間だけではなく、食事の後や運動の後といって体の反応に合わせても分泌されるため、規則正しく食事を摂り、運動をすることで昼間も分泌することができるのです。
つまり、成長ホルモンの分泌を促して身長を伸ばすためには、睡眠と食事と運動の3つが必要不可欠というわけです。
ところが、これらの基本的な生活習慣が乱れているケースが実に多く見受けられます。
食事の面では、絶対に朝食を摂ることです。
小・中学生の時期は、食習慣が完成する重要な時であるにも関わらず、朝食を食べている小学生の割合は90パーセントなのです。
この数字は大きいように思えますが、成長過程に合って十分な栄養を必要とする時期ですから、本来は100パーセントでなければなりません。
平成22年の日本学校保健会による「児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」によると、朝食を食べない理由として「食べる時間がない」「食欲がない」が挙げられており、約80パーセントを占めていました。
その原因となっているのが「夜更かし型の生活」で、これは睡眠時間が短いことにもつながっています。
また、食事の内容ですが、炭水化物と脂肪を摂りすぎる傾向にある点も気になるところです。
実際に、日本の食卓に並ぶ食事内容の統計を取ったところ、圧倒的に穀類や炭水化物、脂肪が多く、タンパク質やビタミン、ミネラルが十分に摂れていないことが分かりました。
タンパク質は、骨や筋肉など体をつくる材料となり、背を伸ばす役割も果たしているばかりか、成長ホルモンの分泌を促す働きもしています。
そのため、タンパク質が不足すると骨の成長にも影響し、結果として背も伸びなくなるのです。
成長期である子供の食事は、何を食べたかが大切で「ご飯をおかわりしているから大丈夫」とはいえません。
栄養バランスのよい食事こそが背を伸ばすカギにもなります。
また、食欲がない原因の一つには、運動不足も挙げられます。
日中に運動をしていると、それだけエネルギーを消費しますので食欲が増進するほか、適度に体が疲れて眠気を促し、質の良い睡眠が取れるようになるのです。
ですから、運動も必要となります。
運動によって得られる効果には、筋力をつける、基礎代謝を高める、心肺機能を強くする、平衡感覚を養う、ストレス発散になるなどが挙げられます。
それが近年、運動能力が低下している子供が増えているのです。
文部科学省が行なっている「体力・運動能力調査」によると、子供の体力・運動能力は昭和60年頃から現在まで低下傾向が続いています。
現在の子供と親の世代とを比較してみると、ほとんどの項目において子供の世代かが親の世代を下回っています。
その一方、身長や体重など子供の体格は、逆に親の世代を上回っています。
このように、体格は向上しているにもかかわらず、体力・運動能力が低下していることは、身体機能の低下が深刻な状況であることを示しています。
成長ホルモンは運動後にも分泌されるうえ、深い睡眠をもたらして夜にたくさん分泌を促す働きをしているため、日中に適度な運動をすることも大切です。
それでは、どのような運動を行えばよいのかというと、子供が興味を持って続けられれば何でも構わないのです。
継続することで成長ホルモンの分泌が安定し、身長もすくすくと伸びていきます。
ところが、睡眠・食事・運動をきちんと実践しているにもかかわらず、身長が伸びないことがあります。
いくら身長を伸ばす3つの条件を満たしていても、それを妨げる要因があったのです。
実は、その要因こそが最も深刻な問題となっています。
それが何かを、次章で詳しく見ていきましょう。

10年前から日本人の身長は伸び悩んでいる

日本人は欧米人に比べて背が低いばかりか、「胴長短足」「がっしりした体形」というのが、日本人の特徴とさえいわれていました。
けれども近年は、欧米人に引けを取らないほど日本人も手足が長く、スマートで背の高い人が増えてきたことを、皆さんも感じているのではないでしょうか。
厚生労働省による「国民健康・栄養調査」を見ると、日本人の平均身長(30歳代)は、1950年では男性が160.3cm、女性が148.9cmでしたが、2010年には男性が171.5cm、女性が158.3cmと、60年の間で約10cmも伸びています。
その背景には、高度経済成長があります。
この時期を境にして、日本人の食生活が大きく変化しました。
それまでは穀類を中心とした植物性食品を摂ることが多かった食事に、肉や乳製品などの動物性食品が多く加わりました。
これによって、子供たちの栄養状態が劇的に改善されたのです。
こうしたこともあって、牛乳をはじめとする乳製品や肉類を摂る食生活が、外国人のような体形をつくると思うようになったのかもしれません。
また、当時は遊び道具が少ないうえに、テレビの子供向け番組も夜は7時台で終わってしまいましたので、子供たちは夕方まで外で走り回って遊んだ後、お腹がすいて家に帰り、ご飯をいっぱい食べて早く寝るという生活が一般的でした。
それが、自然と身長を伸ばす条件を満たしていたと考えられます。
この成長は、遺伝的要因が強いといわれる身長も、環境によって改善できることを物語っています。
ところが、戦後から一貫して右肩上がりに伸び続けてきた日本人の身長が、実は2005年前後で止まってしまっていたのです。
60年前からの身長と比較していくと、確かに日本人の身長は高くなっています。
しかし、近年の成長率だけを見ると、子供たちの身長が伸び悩んでいるという現実があるのです。
文部科学省が発表した「平成26年度学校保健統計調査」によると、日本の児童の身長は平成6年~13年度あたりをピークに、その後は横ばいとなり、ここ10年以上も変わっていないことがわかりました。
むしろ、「日本人の身長はこれ以上伸びない」だけでなく、「今後は低くなる可能性が高い」という驚くべき見解も出てきています。
学校保健統計調査は、満5歳から17歳までの児童を対象に、身長や体重、肥満傾向などについて毎年実施しているものです。
平成26年度の調査結果では、17歳男子の平均身長が170.7cm、女子が157.9cmでした。
それが、平成10年では17歳男子が170.9cm、女子が158.1cmですから、男女ともに0.2cm低くなっていることがわかります。
順調に伸びていけば、あと数年で欧米人に追いつ行ける体形まできていたにもかかわらず、ここにきて失速したのはなぜでしょうか。
ここにも、やはり環境が大きく影響しています。
毎日、身長に悩んでいる子供たちを診察していると、多くの場合で日常生活の中に身長の伸びを妨げる原因があることに気づきます。
もちろん睡眠不足や運動不足、栄養バランスの悪い食事などは成長ホルモンの分泌を妨げるものですが、それ以上に厄介なものがあったのです。
それが「ストレス」でした。
ストレスは、大人でも眠れなくなったり、胃が痛くなるなど体調を崩すほど心身の健康に悪影響を与えます。
ましてや、成長期にある子供の身長は敏感なため、いくら栄養バランスに気を配っても、体内でうまく代謝でいなければ成長ホルモンの分泌は減少してしまいます。
特に、成長ホルモンは寝ているときに多く分泌されるため、ストレスによって睡眠の量や質が低下すると、身長を伸ばすうえでは大きなマイナス要因となるのです。

ストレスで成長ホルモンの分泌が悪くなります

適度なストレスは私たちによい刺激となって、「やる気」を起こさせますが、過度のストレスは血管を収縮して血流を悪くしたり、胃液の分泌を低下させて胃壁を傷つけるなど体調を崩す原因になります。
しかし、これは一種の防御反応でもあるのです。
太古に人類が過酷な環境下で生き延びるために獲得した反応で、命にかかわるような危険にさらされたとき、すぐに逃げられるように体を緊張状態にするシステムと考えられています。
例えば、街を歩いていて怖そうな人と肩が触れて、因縁をつけられたとしましょう。
このとき、あなたの心臓は口から飛び出しそうなほどドキドキして心拍数や血圧が上がり、冷汗は出るし喉はからからに渇いてきます。
これは、原始時代にオオカミなどに襲われたとき、逃げるか戦うかの判断を瞬時に下して、行動を起こすための臨戦態勢でもあります。
現代は山奥にでも入らなければクマなどに襲われることはありませんが、身を守るシステムとして体に刻まれ、怖い目に遭ったり、受験や面接などの大事な場面になると強い緊張状態となります。
このようなストレスに反応して体をコントロールしているのが「自律神経」です。
自律神経は、生命活動にかかわる全身の機能を調整する働きを担っており、私たちが起きていても寝ていても、また無意識の状態でも呼吸や心拍、発汗、血圧、体調、内臓の働きなどを常によい状態に保ってくれています。
こうして自律していて自分の意思ではコントロールできないので、自律神経と呼ばれています。
ところが、意識しても自分では調整できないにもかかわらず、私たちの精神状態には敏感に反応します。
驚いたときにドキドキしたり、悲しいと涙が出るのも自律神経の働きによるものです。
自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、交換神経は体を活発に働かせる方向に働き、副交感神経は体を休ませる方向に働き、両社はシーソーのようにバランスを取り合っている関係にあります。
日中は主に活動モードの交感神経が優位になって適度な緊張状態をつくり、「やる気」を起こさせています。
一方、夜になると主にリラックスモードの副交感神経が優位になって緊張を緩め、休息をもたらすように体の機能を調整しています。
例えば、夜中まで起きていたりすると、本来は副交感神経が優位の時間帯なのに交感神経が優位のまま緊張状態が続きます。
そのために布団に入っても頭や目がさえて眠れなくなり、睡眠不足を招いてしまいます。
体が緊張状態のときは、臨戦態勢にあるため血管も収縮して血行が悪くなりますし、呑気に食事を摂っている状態ではありませんから消化器官の働きも抑えられて消化不良になったり、食欲がなくなったりします。
しかも、神経系は単独で働いているわけではなく、常にホルモン系と連動しており、ストレスがあると交感神経の働きによって血管を収縮させたり、筋肉を興奮させる作用のあるアドレナリンなどのホルモンの分泌が促されて緊張状態にします。
なかでも、生体リズムに合わせて分泌させるコルチゾールというホルモンの分泌量が増加します。
コルチゾールは、炭水化物やタンパク質、脂質の代謝をコントロールしている、生体にとって必要なホルモンですが、増えすぎると成長ホルモンの分泌を抑制する作用があるのです。
さらに、睡眠ホルモンといわれるメラトニンにも影響を与え、不眠を引き起こすことでも知られています。
ですからストレスは子供にとって成長を妨げる大きな要因となるのです。

子供の睡眠時間が減っています

現代は24時間営業の店が溢れるなど社会全体が夜型化しており、多くの人の睡眠時間が減少傾向にあります。
こうした環境の変化は、子供の生活にも多大な影響を与えています。
公益社団法人日本小児保健協会の調査によると、夜10時以降に就寝する子供の割合が、1歳6カ月、2歳、3歳でも半数を超えており、乳幼児の生活時間までも夜型化していることが明らかになりました。
1~3歳といえば、最も急速に身長が伸びる大事な時期であり、本来は14時間くらいの睡眠が必要です。
それが、夜遅くまで起きていたのでは、背が伸びるチャンスをみすみす手放してしまうことになります。
寝ない子は育たないというわけです。
その傾向は年齢が進むにつれて顕著になり、小・中・高校と学年が上がるにしたがって就寝時間もますます遅くなっています。
翌日は学校がありますから早く起きることを考えると、子供たちは慢性的な睡眠不足に陥っているといえるでしょう。
実際に、眠気を訴える子供が多いという報告もあるのです。
朝すっきり起きられずに何度も起こしてもらったり、食欲が出なくて朝食をあまり摂らないといった弊害も出てきています。
本来、7~12歳では11時間の睡眠が必要です。
しかし、現在は平均して8時間35分しか睡眠時間がとれていません。
13~18歳でも9時間は必要なところ、7時間45分の睡眠時間となっているのが現状なのです。
これは世界的に見ても少なく、OECD(経済協力開発機構)加盟国と比較したところ、日本人の睡眠時間は韓国と並んで最下位となっています。
一番睡眠をとっている中国との間では、1時間以上も差が生じていました。
子供の就寝時間が遅くなる主な理由は、塾に通っていたり宿題をするなど遅くまで勉強をしていたり、部活動で帰宅が遅い、家でずっとゲームをしている、テレビを見ている、なんとなく起きている、などが挙げられています。
なかには、「親の寝るのが遅いから」というケースも多く見受けられ、どうやら親の生活習慣が子供に影響している可能性も大きいようです。
例えば、親が残業等で帰宅が遅いことも影響しています。
特に、母親が働いている家庭では、お母さんの労働時間が長いほど22時以降に就寝する子供の割合が多くなっています。
今後、女性の社会活動はますます活発になると思われますので、親のライフスタイルによって子供の睡眠も大きな影響を受けることは意識しなければなりません。
睡眠不足は、身長だけでなく、食欲不振、注意や集中力の低下、疲労感などをもたらします。
子供の場合は、眠気をうまく意識することができないためにイライラしたり、ときには多動・衝動行為となって表れることもあるのです。
ストレスは睡眠不足を招く一方、睡眠不足が精神的にもイライラさせてストレスを生じさせるという悪循環をつくり、これが子供の成長の大きな妨げにもなっています。

睡眠不足は病気によるストレスが原因の場合もあります

私たちは、日中は活動して、夜には眠るという規則的なリズムの中で生きています。
この生体リズムは、1日24時間にセットされている「体内時計」(時計遺伝子)の働きによってもたらされています。
ところが、太陽が出ると昼、太陽が沈むと夜という地球のリズムは約25時間のため、生体リズムとの間では1時間ほどズレが生じます。
この1時間のズレを、朝に太陽の光を浴びることで、脳では毎日24時間に体内時計をリセットしています。
朝起きて目に入った光の情報が脳に送られると、体内時計を直接調整しているメラトニンというホルモンが分泌されます。
メラトニンは睡眠ホルモンといわれ、朝に目ざめて明るい光を浴びることで、約14時間後から徐々に眠気を感じるように体内時計をセットしています。
ですから朝に規則正しく起きて光を浴びることで、体内時計をリセットしなければ生体リズムに乱れが生じ、体を一定の状態に保てなくなるのです。
その結果、体調を崩したり病気になったりするわけです。
生活リズムが不規則な子供は、毎日の体内時計の時間合わせがまちまちのため、寝つき時間も目覚め時間もますます不規則になっていきます。
特に、週末に寝坊をする子供は、体内時計を整えるための光(太陽光)を浴びる機会も逃してしまいますので、夜更かしに拍車がかかります。
夜更かしの子供の多くは、寝不足を週末に解消する傾向があります。
平日に比べて週末に3時間以上遅くまで寝ている子供は、睡眠不足があると考えられます。
週末に遅くまで寝ていると、その日の夜に眠れなくなり、月曜日の朝をつらい思いをして迎えることになります。
1週間の始まりから体内リズムが乱れ、それが学校に行くという規則正しい生活を送ることで、週の後半になってようやくリズムが整ったところに、また週末に夜更かしをしてリズムが乱れるという悪循環が、常に子供を睡眠不足の状態にしていると考えられています。
子供の睡眠不足は、主に生活習慣や睡眠習慣に起因しますが、ときには病気によるストレスが原因の場合もあるのです。
例えば、アトピー性皮膚炎の子供では、夜に痒みが出るケースが多く、痒みで眠れなくなることがあります。
また、鼻炎や喘息で呼吸が苦しいために睡眠を妨げられることもあります。
なかには深刻な病気が睡眠障害を引き起こすことがあり、その代表が睡眠時無呼吸症候群です。
この病気は肥満ぎみの成人がなると思われていますが、実は小児の2パーセントで睡眠時無呼吸症候群がみられ、重度の場合は日中の集中困難や学習能力の低下を招いています。
このほか、アデノイドといって喉の扁桃肥大によって睡眠障害が起こることもあります。
この病気の特徴はイビキが大きいことですので、子供が大きなイビキをかいているときは、この病気を疑ってみるとよいでしょう。
たとえアデノイドだったとしても、手術によって治すことは可能です。
病気によるストレスで睡眠不足が引き起こされている場合は、まず、その治療を受けることが大事なことは言うまでもありません。

思春期が早まっています

子供の睡眠不足が懸念されている理由の一つには、「思春期が早まっている」ことが挙げられています。
現在、思春期が始まる年齢は、男子で11.6歳、女子で9.9歳となっています。
つまり、この年齢で男性ホルモン、女性ホルモンがすでに出てきているということになります。
女子が初潮を迎える年齢は、現在12.24歳です。
1900~1930年の間では15~16歳でしたが、1930~1950年では13歳、1960年代では12.5歳t、だんだん早まってきています。
性ホルモンが分泌されるようになるのは思春期が始まったサインですから、身長もラストスパートに入ります。
それが早まるということは、身長が伸びる期間がより短くなることを意味しています。
例えば女子の場合、10歳で思春期を迎えれば、だいたい12~13歳で大人の体になって身長の伸びも止まることになります。
もともと日本人は早熟のために思春期を迎えるのが早いといわれていますが、それに近年は睡眠不足などの環境の変化が加わったことで、より思春期が早まることに拍車をかけているのです。
思春期には脳神経のネットワークが成熟し、第二次性徴期が始まります。
この時期に睡眠不足になると、メラトニンの分泌が抑えられるため、性的成熟が早まって思春期も早く迎えるといわれています。
メラトニンは、眠りを促す働きをしていることから「睡眠ホルモン」ともいわれ、分泌が不足すると睡眠障害を起こすことで知られていますが、ほかにも性腺抑制作用があるとされています。
そのため、睡眠不足によってホルモンバランスが崩れ、成長ホルモンだけではなくメラトニンの分泌も減少することで、思春期が早まっているのではないかと指摘する専門家もいるのです。
精神的に不安定な思春期に、体と脳が未熟なままで性的成熟だけが早まると、心身のアンバランスを起こしやすくなります。
よく耳にするのは、学校でほかの女子の胸は平らなのに、自分だけ胸が膨らんでいて大人の体をしていることに違和感を持ち、ほかの子と違う自分を否定することです。
それくらいの年頃は、女子では特に「みんなと同じでいたい」という思いが強いため、自分は違うから学校に行きたくないと不登校になるケースがあるのです。
また、心はまだ子供なのに体は大人という状況は、ストレスをうまく解消できないために、特に男子の場合は暴力に訴えることがあります。
そればかりか、生活習慣病など大人がなる病気に子供がなるという、病気の低年齢化も危惧されているのです。
その兆候は、すでに表れています。
近年では小児肥満が深刻化しており、メタボリックシンドロームとの関連が問題視されています。

小児期メタボリックシンドロームの診断基準
小児期メタボリックシンドロームの診断基準

引用元;額田 成(2016). 身長は9歳までの生活習慣で決まる 飛田健治

そのため、新たに小児期メタボリックシンドロームの診断基準が設けられるなど、早期発見・早期予防の取り組みが厚生労働省によってスタートしています。
小児メタボリックシンドロームを防ぐには、大人と同様に生活習慣の改善が必要です。
朝食を摂らないことや、夕食時間、睡眠時間が遅くなることで、小児期メタボリックシンドロームが促進されることが分かっているからです。
また、脂肪や塩分の多いスナック菓子などの間食が増えたり、外に出ないで部屋にこもってゲームをしているなど運動不足になっていることも、子供の肥満を助長していると考えられています。
肥満になると成長ホルモンの分泌が低下するとともに、早熟傾向となって早く大人の体になることもすでにわかっています。
その結果、背の伸びる時期も短くなります。
こうしたことからも食習慣や運動習慣を見直し、子供の頃から偏向的な生活習慣を心がける必要がありますが、その肥満の原因の一つにはストレスによって偏食や過食になるといったこともあるのです。
現代は世界一の長寿国ですが、このままでは将来的に寿命が短くなる可能性さえあります。
そう考えると、身長を伸ばすことは決して個人的な悩みではなく、その背景には社会全体で解決しなければならない、さまざまな問題が潜んでいるともいえるのです。
その中で、親として家庭で改善できることを考えていただければと思います。

親の知らない子供のストレス

子供は、どんな場面でストレスを感じているのでしょう。
親にはわからない学校や塾など家庭の外で起こっているものと、親が原因など家庭内で起こっているものの、2つに大きく分けることができます。
家庭の外で感じるストレスの多くは学校でのことで、新学期を迎えてクラス替えがあり、新しいクラスに馴染めなかったり友達がなかなかできないと、疎外感からストレスが強くなることがあります。
友達関係でも、みんなと同じでありたいがゆえに、無理をして合わせているケースがあります。
例えば、最近は子供も携帯電話を持っていますからメールでやりとりすることがあり、すぐに読んで返事をしなければ無視されることがあるようです。
そのために、片時も携帯を手放さず、食事中もチェックしていたり、寝る直前までメールを見ていることで睡眠不足になっています。
こうしたことから、親と協力して携帯電話の使用を禁止するといった取り組みを、学校全体で行なうところも出てきました。
また、子供に人気のテレビ番組を見ていないと、翌日に学校での話題についていけなくなることもあるようです。
「早く寝なさい」と親が注意するのはたやすいことですが、それで子供が仲間外れになることも現実には起こっているのです。
ストレスは友達関係だけではありません。
授業中に、みんなの前で先生に怒られたり、笑われたりして恥ずかしい思いをしたという話をよく耳にします。
私の患者さんの中にも、モデルになりたいという夢を抱いていた女の子がいました。
彼女はそれを作文に書いたところ、「そんなに背が低いのでは無理!」と、先生がみんなの前で発表して笑われたといいます。
そのときは女子の間から「先生ひどい!」と声が上がったおかげで先生も謝り、その場は収まりました。
それ以来、その子が先生を嫌いになったのは言うまでもありませんが、「何か言うとまた笑われる」という思いが強くなり、みんなの前で発言ができなくなりました。
こうした大人の心無い行動が、子供の自尊心をどれほど強く深く傷つけていることでしょう。
ときには、それがきっかけとなってクラスの生徒たちにからかわれ、いじめに発展して不登校になるケースもあるのです。
さらに、部活でも悩みを抱えていることがあります。
背を伸ばしたいという思いでバレー部やバスケ部に入ったものの、背が低いためにレギュラーになれないなどチャンスを与えられなかったり、ミスをすると「小さいから届かないのだ」と身長のせいにされたりすることがあります。
身長が伸びるまでは我慢して続けるべきか、それともやめたほうがいいのかと、子供なりに葛藤があったりします。
ときには、先輩の言うことには逆らえないと雑用ばかりをさせられたり、コーチが怖いなど子供の世界はまさに大人社会の縮図のように、さまざまな場面で精神的にも肉体的にも傷つき、ストレスになっています。
こうしたことは子供が話してくれなければ、親はなかなか気づくことができません。
子供なりにプライドもあって親には話せない、あるいは親に心配をかけたくないという思いから一人で悩んでいることもあります。
しかし、日頃から子供とコミュニケーションが取れていれば、ちょっとした子供の変化に親なら気づき守ってあげられるのではないでしょうか。
特に、9歳くらいまでであれば、親の介入の仕方によっては解決できる問題も多いように思われます。

ストレスが身長の伸びに及ぼす深刻な影響

大人がそうであるように、子どもにとって家庭は一番安心できる居心地のいい場所です。
にもかかわらず、子どもは家の中でもストレスを感じることがあるのです。
よくあるケースでは、引っ越しをした、両親が離婚した、父親が転勤で単身赴任をしたなど家庭環境が大きく変わったときです。
新しい環境に順応できないと情緒不安定になり、一時的に身長の伸びが停止してしまうことがあります。
このような場合は、早く気づいて治療を受けることで、また元のように身長は伸びていきます。
しかし、新しい環境になかなか馴染めずにいると、気持ちも落ち込んで睡眠不足に至り、成長ホルモンの分泌が悪くなってしまいます。
家庭の中でのストレスでは、皆さんも覚えがあると思いますが、兄弟げんかもときには子どもの心を傷つけることがあります。
ほとんどの場合で「お兄ちゃんなのだから」「お姉ちゃんなのだから」と、上の子は下の子に譲ってあげたり、我慢を強いられることが多いものです。
兄弟の年が離れていれば理解もできますし、逆に弟や妹の面倒を進んで見るなど可愛がりますが、年が近いと兄弟でもライバルになることがあり、比べられると一方が劣等感を抱くケースも見受けられます。
また、家庭内には問題がなくても、塾や習い事をしていて、子どもの能力や資質に合わないときにはプレッシャーを感じることもあります。
例えば、塾の勉強についていけないとか、習い事を続けていても一向に上達しないとき、親が「もっと頑張りなさい」と励ますつもりでかけた言葉に、子どもが追い詰められてしまうのです。
このようにいろいろな場面で、子どもはストレスをかんじるものです。
そんなとき、子どもときちんと向き合い、話に耳を傾けてあげることで子どもの気持ちは落ち着いたりします。
子どもにもそれぞれ個性があり、闘争心が強くて逆境になると燃えて頑張れる子もいれば、心が折れて押し潰されてしまう子もいます。
こうした子どもの性格を見極め、その子に合った言葉のかけ方や接し方をするためにも、親子のコミュニケーションを日頃から取っていることが大切です。
それが、ひいては子どもを精神的に安定させ、成長ホルモンの分泌を促すことにもつながるからです。
ところが、親自身がストレスの原因になっている場合は、子どももなかなか親には言えず、心の中に抱え込んでしまうことがあるのです。
その一つが、両親の仲が悪いことです。
夫婦げんかを見るのは子どもにとって何よりもつらいことです。
それが離婚にまで発展するようなことにでもなれば、なおさら子どものストレスはピークに達します。
両親の仲が悪く、、母親が父親の悪口を子どもに聞かせたり、夫婦げんかの絶えない家庭では、子どもは絶えず精神的に不安な状態が続きます。
そのような子どもは、無意識のうちに早く大人になろうとして、思春期が早まる傾向にあるのです。
これを「思春期早発」といいます。
思春期早発は、父子家庭や母子家庭の場合でも起こることがあります。
親が一人で働きながら自分を育ててくれている姿を見て、子ども心に「早く大人になって親をラクさせてあげたい」と強く思い、早く思春期を迎えてしまうのです。
例えば、このような報告もあります。
父親を病気で早くに亡くし、母親と妹の三人で暮らしていた10歳のA子さんは、朝から晩まで働いている母親を助けようとして、家の中のことを進んで手伝っていました。
妹の面倒もよく見ていましたし、近所の人にも明るく挨拶をするしっかり者のよくできた子どもで、それが母親の自慢でもありました。
こういう母親の期待を裏切ってはいけないという気持ちと、疲れているのに心配をかけてはいけないという気持ちから、A子さんはいつも笑顔で泣き顔を見せることはあまりありませんでした。
母親が帰ってくると甘えている妹を、いつも眺めていました。
そんなある日、A子さんが友達と一緒にいるところを見かけた母親が、「みんなより小さい」ことに気づいたのです。
それで思春期早発とわかり、治療を行っていました。
このように、親にとっては自慢できるほどの非の打ちどころのない子どもでも、頑張りすぎればストレスになってしまうのです。
それとは逆に、無意識に「大人になりたくない」と思うケースもあるのです。
例えば、親が再婚したときなどです。
父親と子どもの二人暮らしの家庭に、父親が若い女性と再婚して新しいお母さんがやって来ました。
それまでは父親の言うことをよく聞く手のかからない子どもだったのに、若いお母さんができた途端に反抗しはじめ、何を聞いても泣いてばかりいるようになりました。
これは幼児に逆戻りした状態で、やはり成長が遅れてしまうのです。
さらに深刻なのは、親から愛情を得られずに過ごしていると、子どもは「愛情遮断性低身長」という病気になる危険があることです。
これは、家庭内に問題があるなどで、親の愛情を十分に感じられない子どもが精神的ストレスから成長を阻まれてしまう病気です。
その最たるものが親から虐待を受けているケースで、そういう子どもは愛情遮断性低身長になりやすいのです。
「私たちは子どもを愛しているから、その心配はない」と思われたかもしれませんが、その愛情が子どもにちゃんと伝わっているでしょうか。
実は、親は子どもを愛していて虐待などしていなくても、いつも親が忙しくしていて話を聞いてもらえなかったり、食事を一人あるいは兄弟だけで食べて寂しい思いをしていたり、兄弟げんかをするといつも一方的に自分ばかりがしかられる、将来のためになるからと無理やり塾や習い事をさせられているなど子供からすると親の愛情を感じられないときにも愛情遮断性低身長になることがあるのです。
親のほうでは愛情を注いでいるつもりでも、受け取る側の子どもがそれを感じられないようでは意味がありません。
ですから、子どもにストレスがなく、健やかに伸び伸びと育つには、両親の仲が良く、子どもにもいっぱい愛情を注いで、それが子どもに伝わって笑い声の絶えない環境を整えることが大事なのです。
なぜなら、親の愛情は子どもにとって何よりの精神安定剤になるからです。
何も言わなくてもギュッと抱きしめてあげるだけで、子どもの心は安心感に包まれて安定します。

~しなさい口調は子供にとってストレスしか感じません

身長を伸ばすためには、睡眠、食事、運動、そして、ストレスをやわらげてあげる親の愛情が必要と説明してきました。
このようにお話すると、条件ばかりに目を奪われ、それを何としてでも満たそうとして家庭内で厳しいルールをつくって実践しようとします。
ルールをつくるのはいいことなので、ぜひ設けていただきたいと思っています。
しかし、その方法が極端なもので、子どもが窮屈に感じたり、一方的に親が決めたものでは成功に導くことが難しくなります。
例えば、「寝る時間だから早く布団に入りなさい」「栄養を摂らないといけないのだからしっかり食べなさい」「運動が大事なのだから外で遊びなさい」などと、ただ口うるさく言うだけでは、子どもも納得していませんから守れなくなります。
どんなによいことであっても、強制するのは逆効果となります。
それがかえってストレスとなり、子どもの成長を妨げるマイナス要因へと変わってしまうからです。
食事の面では、子どもの好き嫌いが出始めるのはだいたい3~4歳の頃ですが、この時期に「ニンジンは栄養があるのだから食べなさい」とか、「残さず食べないと大きくならないよ」などと注意しながら食べさせていると、子どもはストレスを感じて食事の時間が憂うつになってきます。
それを食事のたびに繰り返されることで、やがて食事自体に興味がなくなり、食事中に食べ物で遊んだりして小食の子になる可能性があるのです。
こういう子どもが小学校に上がって給食になると、食事に興味がないために食べるのが遅く、みんなが食べ終わって遊んでいるなか、まだ食べているという状況をしばしば招きます。
なかには、大きくなるようにと牛乳を毎日たくさん飲まされていた子どもが、牛乳嫌いになった例も報告されています。
食事は、成長に必要な栄養を摂るものである以上に、生命を維持するための大事なエネルギー源です。
これが十分に摂れていなければ身長を伸ばすどころか、体の各器官が働けなくなり丈夫な体さえつくれなくなります。
親に考えていただきたいのは、まず食事の時間が待ち遠しく思えるような楽しい食卓にしたうえで、好き嫌いをせず何でもきちんと食べる習慣をつけさせることです。
運動にしても、体を動かして汗をかくことの爽快感を味わうなど、スポーツに興味を持たせることが先決です。
そもそも運動がなぜ大事かというと、体を細胞レベルで発達させるからなのです。
私たちの体は、約60兆個の細胞でできているといわれています。
その一つ一つの細胞の中には遺伝子が治まっている核があり、周りにはいろいろな組織があります。
その一つが、ミトコンドリアというエネルギーの生産工場のような組織です。
ミトコンドリアは、食事から摂取した栄養と呼吸から取り入れた酸素を使ってエネルギーをつくりだしています。
そのエネルギーを利用して、私たちは体や脳を働かせて生命活動を営んでいます。
ミトコンドリアの数は一つの細胞に対して一つというわけではなく、たくさん存在していますが、運動量によって増えたり減ったりしています。
したがって、運動をしてミトコンドリアの数が増えると、それだけエネルギーの生産能力が高まり、代謝も良くなって体の機能も向上します。
その反面、運動をしなければミトコンドリアの数は少なくなるため、いくら食事をたくさん摂ってもエネルギーをつくりだすことができず、脂肪として体内に蓄積されていきます。
特に筋肉は、人体で最もエネルギーをつくりだす器官でもあるので、使わないとしぼんでしまうだけではなく、ミトコンドリアも活動できませんから効率よくエネルギーがつくられず、体温を保つことも難しくなります。
実際に、キリンMCダノンウォーターズ株式会社が小児科医を対象に行ったアンケートによると、約80パーセントの小児科医が「低体温の子どもが増えた」と回答したそうです。
一般的に、子どもの平熱は36.5~37℃前後ですので、平熱が36℃を切ってしまうと低体温と言わざるを得ません。
子どもが低体温になってしまうと、朝起きるのがつらい、疲れやすい、集中できない、すぐにカッとなるなど、さまざまな症状を引き起こします。
その主な原因も、朝食を抜いたり夜遅くまで起きていたり、運動不足や偏食など、不健康な生活習慣が挙げられています。
運動することはミトコンドリアを活性化させ、続けることでさらに増やすことにもつながります。
そうなれば、心臓も肺も肝臓も筋肉の細胞にもミトコンドリアは存在しますので、基礎代謝が上がって体温も上昇するほか、有酸素能力や呼吸能力、心肺能力も上がります。
つまり、運動は全身の細胞が活性化し、すべての機能を向上させるわけです。
そして、運動をした後はお腹も空きますので、食事も美味しくたくさん食べられ、ますます増えたミトコンドリアがエネルギーをつくりだすという好循環が生まれます。
また、運動はストレスを発散させ、適度の疲労感をもたらすことで、質の良い睡眠がとれるようにもなるのです。
このように、睡眠・食事・運動はつながっており、お互いに影響し合って機能しています。
どれが欠けても支障をきたすため、これらを日常生活にバランスよく取り入れて習慣化し、ストレスのかからないようなルールづくりが大切なのです。